innate8の日記

大海を泳ぐ

【書評/感想】ちょっと不思議でおもしろい「東京奇譚集」

まずはじめに、このブログには書評を書こうと思っていたのにほとんど書いていないことに気がつきました。(笑) 今日から読んだ本は書評を書いていこうと思います。


 僕は村上春樹が好きだ。好きではあるのだけれど、どうしても「海辺のカフカ」以降の作風が受け入れられなかった。一応カフカは読んだのだけれど、性的描写はそんなに必要か?とか、主人公設定に無理があるんじゃないか?とか、いろいろな点が引っかかってしまい、一旦村上春樹から遠ざかっていた。

 最近のノーベル文学賞の話題とか、「色彩を持たない・・・」とか、やはり文学界に今もなお影響を及ぼしている村上氏の作品を久しぶりに手にとって見るかという気になったのだった。それで「1Q84」を読もうと思ったのだけど、長編過ぎて中だるみしそうなのでリハビリもかねて「東京奇譚集」を購入。短編が5編。ちょうどいいだろうと。

まさに奇譚

 本の内容は、まさに不思議な話だ。日常から非日常に一歩足踏み外してしまったような、どこにでもありそうだけど、ちょっとありえない不思議なお話が5編収録されている。村上氏は、このようなちょっと常軌を逸している系のフィクションが似合っている気がする。

村上ワールドが凝縮されている

 リハビリとして、または入り口として村上春樹を読むには適している本だ。文章は、まさに村上春樹だ。海外文学風でドライでどこか切ない。喪失感や虚無感、比喩の表現も相変わらず上手いし、小説のひとつのピースとして違和感なく文章にはまっている。そして、日常なんだけどちょっと不思議ってのは彼の文体やセンスに適しているんだろう。純粋に読んでいて面白いと感じた。

 それと、村上氏が愛読しているカーヴァーの影響を強く感じされる1篇もあり興味深く読めた。彼は、海外文学をこんな形で昇華するんだなって。

 ただ、本書の最後の書き下ろし「品川猿」は少しありきたりな内容かつ文体で、らしさを感じなかった。そこは少し残念。今もなお精力的に小説書いているけど、長編より短編でいったほうがいいんじゃないかと感じてしまった。

おわりに

 いい具合に村上春樹に復帰できた。これを期にカフカ以降の作品も読んでみようかな。とくに1Q84。いや、初期作品を再読するのも新しい発見があって面白いかもしれない。とりあえず、何か読んだらまた書評書きます。


東京奇譚集 (新潮文庫)

東京奇譚集 (新潮文庫)