innate8の日記

大海を泳ぐ

初恋を思い出す季節

 今週のお題「バレンタインデー」

 2月14日と言えばバレンタインデーだけど、この季節になると初恋を思い出す。

 僕の二十数年の短い記憶の糸を辿って行くと、僕にとっての初恋というものは、小学三年のバレンタインにたどり着く。当時の僕はちょっと粗野でナイーブで純粋な少年だった。そしてある女の子に恋をしていた。幼稚園から小学二年までずっと同じクラスだった、可愛らしい女の子だ。

 これが恋という奴だ、と理解したのは小学三年になってその女の子とクラスが別なり、約一年が経ったバレンタインデーだった。なぜだか分からないけど、クラスが別々になってしまってから一年も経つのに、その女の子は僕にチョコをくれたのだ。しかも、僕の家に持ってきてくれた。手作りのチョコとラブレター。

 チョコをもらった僕は、自分がその女の子に恋をしている事をはっきりと認めた。それまで人を好きになるって感覚がよくわからなかったが、顔を赤くしてチョコを渡す女の子を見て、そして一生懸命作ったであろうチョコを受け取って、胸の中にあった得体のしれない感情に名前が与えられたのだ。ああ、これが人を好きになる恋って奴なんだ、と感じた。

 その後、何日間か僕はふわふわした浮遊感の中に生きた。世界の真理に触れた気がして、何だか嬉しかった。しかしながら初恋ってのは上手く行かないもので、その女の子と会うとどうにも照れくさく、まともに会話出来なくなってしまったのである。結局、僕は女の子の事を無視するようになってしまった。純粋に恥ずかしかったのだ。それから、中学三年になって再び同じクラスになるまで、ほとんど交流はなかった。そして、中学三年の僕らは他の誰かに真剣に恋をし、二つの目で懐疑的に世間を見渡す様になった。たぶん、その女の子も例に漏れずそうだったのだろう。

 風の噂で聞いたのだけれど、初恋の人は地元で結婚し、幸せな生活を送っているそうだ。

 二十数年経った今、世の中は便利なもので、インターネットを介して個人情報の断片を覗き見る事が出来る。誰が誰と交際しているとか、結婚しましたとか、既婚者ですとか。これくらいの歳になると、恋愛のスタイルも変わるし、リアリティが増す。それは仕方のないことだ。世間の中に貼り付いている「普通」という感覚からすれば、そろそろ結婚して子供がいてもおかしくない年齢なのだから。

 でもね、思うんですよ。もう一度、初恋のように、瑞々しくてドラスティックな恋がしたいなーなんてね。